礼宮さま・紀子さんの記者会見での一問一答

 礼宮さまと川嶋紀子さんの記者会見は、12日午後3時から25分間、赤坂御所の「桧の間」で行われた。一問一答は次の通り。

 −−このたびは、ご婚約決定、おめでとうございます。

 礼宮さま「どうも、ありがとうございます」

 −−質問に移らせていただきます。お2人は皇室会議で正式にご婚約決定となりましたが、現在のご心境をお聞きしたいと思います。

 礼宮さま「皇室会議で承認していただきまして、いま、ホッとしているというか、そういう気持ちです」

 紀子さん「私も、礼宮さまと同じく、私どもの結婚に皆さまのお認めをいただき、まことにうれしく存じます」

 ◆ひかれた点 プロポーズ

 −−お互い、どんな点にひかれたのでしょうか。

 礼宮さま「以前にもお話ししたことがございましたが、話をしていて楽しい人。また、どことなく愛きょうがあるというか……」

 紀子さん「生物、例えば御所内で飼ってらっしゃるナマズやアヒルなどをかわいがっておられるお姿や、熱心に魚類を研究しているお姿に強くひかれました。タイのお酒、メコンに誘われるまま、先生やお友達と語り合い、またギターを弾かれたりするご様子、そんなところにひかれました」

 礼宮さま「付け加えると、(紀子さんは)非常に話題が豊富な方じゃないかと思っております」

 −−ご結婚を決意されたのは、いつごろでしたか。礼宮さまからのプロポーズのお言葉と、紀子さんのご返事は。

 礼宮さま「決意は、だんだん、徐々に、そういう方向に固まっていったというところでしょうか」

 紀子さん「私も礼宮さまと同じく、徐々に気持ちを整理して参りました」

 礼宮さま「プロポーズは……そうですね、確か昭和61年の6月26日だったと思いますけれども、『私と一緒になってくれませんか』と話した記憶があります」

 紀子さん「私は『よく考えさせていただけませんか』と申し上げました」

 −−先ほど、お2人は両陛下のところにごあいさつされたと思います。その時、両陛下はどんなことをおっしゃいましたでしょうか。

 礼宮さま「このたびの婚約をうれしく思います。いままで2人が培ってきたものをさらに伸ばし、また、お互いに補いあい、よい家庭といいますか、よき宮家を築いていくことを期待しているとのお言葉でございました」

 紀子さん「同じようなお言葉をたまわりました」

 −−現在、(昭和天皇の)喪中で、ご自身も留学中のお立場ですが、そういう時のご婚約決定をどうお考えになりますか。両陛下から反対はございませんでしたか。

 礼宮さま「現在、留学中、喪中ということでもありますが、ここ一、2年の間に川嶋家の方にいろいろ問い合わせ等が多くなって、私としても責任のあることですので、早い時期に公にしたいと判断いたしました。そうなりますためには、本日もございました皇室会議を経なければいけないわけですが、それにつきましては宮内庁としても特に異議はありませんでしたし、両陛下から反対もありませんでした」

 ◆結婚の抱負 新家庭像は

 −−ご結婚の儀式はいつごろと考えていらっしゃいますか。新婚旅行のご希望は。

 礼宮さま「現在は喪中ですので、明年1月の喪明けを待ち、それから考えていきたいと思っています。新婚旅行などは、今のところまだ考えておりません。結婚の後は、伊勢神宮とか神武天皇陵などの参拝もございます。また、昭和天皇のご生前にお耳に入れることができませんでしたので、武蔵野陵に参り、ご報告したいと思っています」

 −−ご結婚されると、独立され、宮家を営まれるわけですが、今後のご自身のあり方、抱負というものがございましたら、うかがいたいと思います。

 礼宮さま「新しい経験となるわけですけれども、いろいろな方からお導きいただきながら、2人でいい家庭を築けたら幸いと思っております。皇族としての抱負といたしましては、天皇をお助けする立場でございますし、与えられた皇族としての仕事をひとつひとつ、大切に果たしていくつもりでおります」

 −−皇太子さまより先に結婚が決まりましたが、ご感想は。宮内庁は皇太子さまのご結婚をできるだけ早くと考えているようですが、お近くにいてどのような雰囲気でしょうか。

 礼宮さま「兄の皇太子が早く決まればそれに越したことはなかったわけですし、私もそのことを強く望んでいましたが、先ほども申したような事情もございまして、私の方が先になってしまったということでございます。雰囲気? 以前に30歳までにできれば上出来というふうに申しましたけれども、やはり30歳までにできれば上出来なのではないかと私は思っております」

 −−暗い見通しですね。

 礼宮さま「暗いと言いますか……。私もわかりませんけれども」

 −−紀子さんは一般の家庭から皇室に嫁ぐことになりますが、これから皇族の一員になられるお気持ちは。

 紀子さん「私は礼宮さまと4年にわたり親しくさせていただき、礼宮さまのお人柄、お考えから多くのことを学ばせていただきました。また両陛下、東宮殿下、それから紀宮さまが、明るい中にも責任あるお立場をご自覚になり、ご生活なさっているお姿を拝見させていただきました。ありがたく、まことに心強いことでございました。皆さまのお教えを賜りながら一つ一つ学んでいきたいと思っております」

 −−紀子さんにお尋ねいたします。ご結婚されたら、どんな家庭を築いてゆきたいとお考えでしょうか。また、お子さまは何人ぐらい、お望みでしょうか。

 紀子さん「礼宮さまとご一緒にのんびりと明るく、和やかな家庭を築けたらと思っております。後の質問についてでございますが、それについても、これからゆっくりと考えていきたいと思っています」

 −−初めて結婚の話が出た時、(紀子さんの)ご両親は何とおっしゃっていましたか。

 紀子さん「父は『自分の人生は自分の責任や判断で決めることが望ましい。よく考え、よく悩んだ上で、結論を大切にしなさい』と申しておりました。また、母は『紀子ちゃん、よく考えてみましょうね』と申しまして、そのあとで『はたち前半のころは豊かな経験をすると同時に、よく勉強し、ライフワークの基礎を作る重要な時期ですよ』と申しておりました」

 ◆勉学の見通し 今後の計画

 −−これから結婚の日まで、学業など日々の生活についてどのように考えていらっしゃいますか。

 紀子さん「私は現在、大学院生でございますが、礼宮さまは大変ご理解があるようで、そのご理解のもとに、時間の許す限り勉強を続けたいと思っております」

 礼宮さま「私も、まだイギリスの方でやりたい仕事、研究と申しますか、たくさんありますので、このことが一段落つきましたら、できるだけ早い機会にイギリスへ参りまして、前と同じような研究生活に戻れればと考えております」

 −−(11日の)誕生日に礼宮さまから何かプレゼントがあったとうかがっておりますが。

 礼宮さま「私からお答えさせていただきますと、何というか、写真立てみたいなものなんですね。ちょうど2人の人が入るような、そんなものをプレゼントいたしました」

 −−中に写真は入っていたのでしょうか。

 紀子さん「これから思い出深い写真を入れて、飾っておきたいと思います」

 −−どこで求められたものなんですか。

 礼宮さま「日本で」

 −−紀子さんはご結婚後、大学院での勉強をどうなさいますか。

 紀子さん「今後どんな生活を送るか、ちょっと分かりませんけれども、時間が許す限り勉強はずっと……一生続けたいと思っております」

 −−失礼な質問ですが、お2人は長い交際を続けていらっしゃいますが、けんかなどというのはなさったことはございますか。

 礼宮さま「けんかの度合いにもよりますが、双方、からかったり、そんなことはいたしましたけれども」

 −−涙を流したようなことはございましたか。

 紀子さん「みなさん、ご存じだと思いますが、(礼宮さまが)英国にいらっしゃった日でございます」

 −−プロポーズの場所はどこだったのでしょうか。

 礼宮さま「場所は目白近辺。夕方、集まりがありまして、私が(紀子さんを)送って帰る途中、ちょうど横断歩道のところで信号待ちをしている間に、ついつい長話になって、その時に」

 −−結婚までにお2人でタイへ出かけるとか、イギリスへお連れになるというお考えは。

 礼宮さま「まだ、そういうことにつきましては全然考えておりません」

 −−先ほどのプロポーズの話ですが、紀子さんは「よく考えさせていただきます」と答えられ、そのあとはどんな展開だったのでしょうか。

 紀子さん「先ほど申しあげたように、徐々に気持ちを確かめあいながら、きょうになりました」

 −−紀子さんは礼宮さまが初恋の人ですか。

 紀子さん「そうでございます」

 −−(学習院大構内の)本屋で最初の出会いがあったとお聞きしていますが、その時の第一印象は。

 礼宮さま「こちらのお父さまを前から存じ上げていたんですが、非常にお父さまの話し方と似ているなと思いました」

 紀子さん「私はお友達と話してらっしゃるお姿を拝見して、思ったより気さくな方という印象を受けました」

 −−ご婚約に至るまでに障害のようなものは感じられませんでしたか。

 礼宮さま「私といたしましては、ほかからの反対は一切なかったと思っております」

 −−皇太子さまの方から祝福のようなお言葉はございましたでしょうか。

 礼宮さま「おめでとうということですね」

 −−前回、イギリスに礼宮さまが行かれた時、涙を流されたということですが、また礼宮さまはイギリスに戻られます。ご婚約が決まられたことで気持ちはだいぶ楽になりますか。

 紀子さん「これからは以前よりも親しくさせていただくことができるとうれしく思っておりますが、やはり、心に通じ合うものがございましても、距離が離れますと寂しいものでございます。おたちになる日はしんみりと涙を流すことになるのではないかと思いながらも、笑顔でご出発を送りたいと思っておりますが」

 −−きょうはありがとうございました。お幸せに。

(1989年9月13日  読売新聞)

引用元 http://www.yomiuri.co.jp/feature/impr/0609article/fe_im_89091303.htm
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